原価分解をわかりやすく解説! IE法と最小自乗法と勘定科目精査法の使い方とは?

原価分解をわかりやすく解説! IE法と最小自乗法と勘定科目精査法の使い方とは?

2022年12月10日
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多くの企業ではCVP分析をもとに発生する原価を固定費と変動費に分類していますが、それらをさらに原価分解をする企業は多くみられません。管理会計では、意思決定やCVP分析を活用するために原価を固定費と変動費を操業度の関連に応じて区分しなければならない場合があります。

 

そこで、今回は固定費と変動費を明確にわける手段として、原価分解をテーマにわかりやすく解説していきます。原価分解の方法といってもいくつかパターンがありますが、「IE法(工学的方法)」「最小自乗法」「勘定科目精査法」について紹介しますね。原価管理を行う現場担当者や会社の意思決定を行う経営者にとって必見の記事になりますので、最後までご覧ください。

 

この記事をぜひ読んでほしい方

・固定費と変動費をさらに原価分解したい方

・原価分解についてはじめて知る方

1.原価分解の種類

原価分解とは、財務会計で発生するコストに対して、操業度の関連に応じて固定費と変動費に分類することをいいます。原価分解は大きく「技術的な予測に基づく方法」と「過去の実績データに基づく方法」の2つに分類されます。前者は原価がいくら発生すべきかといった基準で、後者は実績データの平均値の数値を基準とした方法で原価分解されます。

 

「技術的な予測に基づく方法」と「過去の実績データに基づく方法」には以下の原価分解の方法があります。

 

  • 技術的な予測に基づく方法

①IE法(工学的方法)

 

  • 過去の実績データに基づく方法

②高低点法

③スキャッター・チャート法

④最小自乗法

⑤勘定科目精査法

 

①IE法(工学的方法)

IE法とは、工場などで働く従業員が工学的研究をもとに、作業内容を測定した上で、製品を製造する原材料や労働力などと製品原価の関係から発生する原価を予測する方法になります。IE法は材料費や労務費を予測するための手段として、新製品などの過去データがないものに使われる場合もあります。

 

②高低点法

高低点法とは、調べる費目に対する過去の実績データの中で、操業度が最も高い点と低い点を直線で結ぶことでその直線の総額の原価を求める方法です。ちなみに、総額の原価を求める直線のY軸と交わる切片が固定費で直線の傾きが変動率になります。

 

③スキャッター・チャート法

スキャッター・チャート法とは、調べる費目に対する過去の実績データをグラフにするために、各データの数値の真ん中を通るように直線を目分量で引く方法になります。直線の切片と傾きについては高低点法と同様です。

 

④最小自乗法

最小自乗法とは、高低点法やスキャッター・チャート法と異なり、目分量で引いた直線を計算式で求める方法になります。補足になりますが、最小自乗法は実績データと真ん中に通る直線の誤差の自乗の和を最小にすることによってほぼより正確に近い直線を求めることができる方法なのです。

 

⑤勘定科目精査法

勘定科目精査法とは、財務諸表上にある各勘定科目によって1つ1つ変動費か固定費に振り分けていく方法になります。ただし、どの勘定科目が変動費なのか、固定費なのかという振り分けは業種や各企業の業務の実態によって変わってきます。中小企業庁と日本銀行が原価分解の基準を掲載していますので、ご参考にいただければと思います。

 

2.IE法と最小自乗法と勘定科目精査法のメリットとデメリット

では、原価分解のそれぞれの方法についてメリットとデメリットについて、こちらで紹介します。

 

①IE法

メリット

・理論的で過去のデータがない場合でも効果的に利用できる

デメリット

・作業内容と原価の因果関係を見つけ出すのが難しい

 

②最小自乗法

メリット

・過去の実績をを全て考慮した上で、ほぼ正確なデータがわかる

デメリット

・計算方法が複雑である

 

③勘定科目精査法

メリット

・財務会計の勘定科目のもとで分類されるので、すぐに算出できる

デメリット

・固定費と変動費の分類が担当者の判断によって委ねられやすい

3.まとめ

今回は、変動費と固定費を明確に分類する手段として原価分解について解説しました。原価分解の手段の種類について解説しましたが、利用用途によってはどのような原価分解の方法を利用すればいいのか理解いただけたかと思います。原価分解は企業にとってコストを把握する上で大切な手段ですので、ぜひ、有効活用していきましょう。