製造業における原価計算の手法として、標準原価計算は長年にわたり利用されてきました。
標準原価計算では、製造現場の材料の使用量や作業時間の差異を分析することで、生産性を管理する方法が用いられています。

近年のコロナ禍を背景に、工場の自動化が加速し、産業用ロボットの導入が進むことで、従業員数が減少し、標準原価と実際原価の乖離が小さくなってきました。
このような変化の中で、新たな原価計算と原価管理の手法として注目されているのが、「ABC(活動基準原価計算)」と「ABM(活動基準原価管理)」です。
本記事では、「ABC(活動基準原価計算)」と「ABM(活動基準原価管理)」の手法の仕組みや標準原価計算との違いについて詳しく解説します。
【ABC(活動基準原価計算)】とは


ABC(Activity-Based Costing)は、活動基準原価計算と呼ばれる手法で、間接費を「活動(Activity)」という単位で割り当て、その活動を基準にして製品の原価を算定する方法です。



標準原価計算のように部門ごとに割り当てるのではなく、活動に焦点を当てることで、より正確な原価配分を実現します。
ABCの仕組み
間接費を集計するための活動単位(コスト・プール)を設定する。
活動に消費される資源を特定し、配賦基準(資源作用因)を決定する。
活動が製品に与える影響を分析し、製品ごとに間接費を配分する基準を決定する。
活動ごとに集計された間接費を、製品ごとに割り当てることで、より正確な製品原価を算出する。
ABCのメリット
原価の精度向上
- 間接費の配賦基準をより細かく設定できるため、製品ごとの正確な原価が把握可能。
コスト削減の可能性
- 活動ごとにコストを分析することで、無駄なコストを削減できる。
戦略的な意思決定が可能
- どの活動が利益を生み出しているかを明確にし、経営判断に活かせる。
ABCの具体例
品質検査の原価を配賦する場合、品質検査の回数を基準にすると、原価と回数の間に比例関係が生まれます。
これにより、間接費の配賦の精度が向上し、正確なコスト管理が可能になります。
ABM(活動基準原価管理)】とは


ABM(Activity-Based Management)は、活動基準原価管理のことで、ABCの概念を活用しながら、業務プロセスの効率化やコスト削減を目的とした管理手法です。
ABMの仕組み
業務プロセスに関わる従業員、時間、コストを分析し、価値を生み出す活動と無駄な活動を特定する。
間接費の発生原因を明確にし、コスト削減のための対策を講じる。
活動ごとに成果を測定し、改善すべき点を特定する。
ABMのメリット
無駄なコストの削減
- 価値を生み出さない活動を排除し、効率的な運営を実現。
業務改善の促進
- 業務プロセスを可視化し、改善点を明確にする。
利益率の向上
- 高付加価値の活動にリソースを集中し、収益性を向上させる。
ABMの具体例
製造業で検品作業に多くのコストがかかっている場合、検品プロセスを見直し、自動化を導入することでコスト削減が可能になります。
このように、ABMは業務の最適化を目指す管理手法です。
ABCとABMの違い


項目 | ABC(活動基準原価計算) | ABM(活動基準原価管理) |
---|---|---|
目的 | 製品ごとの正確な原価算出 | 業務プロセスの効率化とコスト削減 |
手法 | 活動単位で原価を配賦 | 活動ごとの業務改善を行う |
対象 | 製造原価の計算 | 業務プロセス全般 |
期待効果 | 製品別の正確な原価計算 | 業務効率向上とコスト削減 |
標準原価計算との違い
配賦の視点
- 標準原価計算では、部門を基準に間接費を配賦します。
- ABC/ABMでは、活動を基準に間接費を配賦します。
活動への焦点
- 標準原価計算は主に数量や時間差異の分析を重視します。
- ABC/ABMは活動そのものの効率性を向上させることに主眼を置きます。
まとめ
本記事では、ABC(活動基準原価計算)とABM(活動基準原価管理)について解説しました。



ABCは、間接費をより精度高く配賦するための手法であり、ABMはその考え方を応用し、業務プロセスの最適化を目指す管理手法です。
標準原価計算と比較すると、ABCは間接費の配賦精度を向上させ、ABMは業務の無駄を削減することで、より効率的なコスト管理が可能になります。
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